パナガイドの謎

通訳といえばパナガイドです。私自身、そんな通訳用の機械があるとなんとなく知ってはいましたが、通訳になるまでは、一度も使ったことがありませんでした。通訳になって初めて実物を見たとき、「今どきこんな古臭い無線機を使っているんだ!」とびっくりしたことを覚えております(私、一応昔は無線系のエンジニアでしたので、無線機については物を見たら技術的にどんなもんかはだいたい見当がつきます💦) 

数年前に電波法が改正されてスプリアス規格(不要輻射とも言います、要するに「不要な(汚い)電波を出すな」という規格です)が厳しくなったために古いパナガイド送信機が規格外になってしまい、電波法違反になるということで、2023年以降は旧型はもう使えません、新型に買い替えるように、みたいなニュースが目新しいところです。しかし、「コロナなので、経過措置を当面の間とする」いう不思議なお達しが総務省から出てきて、経過措置(猶予期間ってこと?)を2022年末までから、「当面の間」に延長するということらしいです(笑)なのでいまだになんとなく使っても違法ではない状態けど、早く買い替えてね?みたいな状態が続いているらしいです。。こんなのあり?)これがパナガイドに関する1つ目の謎。

さて、パナガイドの新型と言ってもほとんど代わり映えしない製品です。メーカーは規格に合うようにしただけで機能や使い勝手を改良する気はさらさらないみたいですね。パナガイドはニッチなマーケットで独占状態になると競合もいないし、楽な商売ができるという見本みたいなものでしょうか。パナソニックはうまいことやりました。他の会社が見向きもしないマーケットなので、こんなことになっちゃっているのでしょうか?よくわかりません。ちなみに当然ながらパナガイドは日本独自仕様というか、日本だけで通用する日本の電波法で規定された無線機(特定小電力無線局322Mhz帯C型ワイヤレスマイク用)なので、国外では使えない(違法になるという意味)です。

今時、手軽に使う無線機(代表的なのはWiFiとかBluetoothとか)は世界中で使える共通の2.4GHz帯(ISMバンドと呼びます。免許なしで自由に使える周波数として国際的に認められたものです)を使うのが当たり前なのですが、パナガイドのような日本の製品は世界標準は完全無視(笑)。例えば、海外で主流と言われるDigiWaveは当たり前のように2.4GHz帯を使っています。なので、どこの国に持って行っても使えます(当然日本でもOK)

パナガイドの古臭いところはいろいろあります。1つ目はこの「322Mhz帯C型という変な(日本だけで通用する)電波を使っていること」ですが、他にも、マイク端子が2極だったりして使い勝手が最悪です。最近ではスマホのおまけでいろんなイヤホンマイクが出回っているし、スマホ用の格安ピンマイクもいっぱい売っています。が、パナガイドには使えません!!それはパナガイドの端子が2極というすっごい古い仕様だからです。おかげで、パナガイド専用マイクというものを結構なお値段で買う羽目になるのです。ここもうまいことやってますねパナソニック。普通のマイクを使えるようにしてもパナソニックには何のメリットもないので、あえて、古い2極仕様のままにしているわけですね。そしてユーザはよくわからないまま純正品を買っているわけです。ちなみに2極を今時のもの(4極が主流です)に変換するのは、すっごい簡単です、ただ信号線を繋げばいいだけ。なのに、なぜこんなのがいまだに通用しているのか?普通のマイクが使えるように4極対応にするという簡単なことをなぜしない!? これが2つ目の謎(というか、やる気がないだけというのはわかってはいるのですが💦)

余談)私の場合は、自作で2極-4極変換ケーブルを作ってパナガイドを普通のピンマイクで使ってます。パナガイド専用のマイクを持っていくなんて無駄なので、パソコンにもスマホにも(そしてパナガイドにも)使えるピンマイク(普通にアマゾンなどで売っている3.5㎜4極タイプのものです)を持って行ってます。

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次の謎は、変調方式についてです。簡単に言うと、デジタルかアナログか?ってこと(かなり乱暴なまとめですが、ご容赦ください) パナガイドはアナログか?デジタルか?皆さん知ってますか?答えは「アナログ」です。ではここで「アナログ」ってどういう意味か?というと、FMラジオと同じ電波を使っているってことです。びっくりされた方もいるかもしれません、だっていまどきアナログでFMラジオと同じ?そんなはずはない、だって「デジタル処理で高音質化」とかパナソニックのサイトで言っているし。。と思われたかもしれません。実はこのサイトで言っている「デジタル処理」というのは本来の無線のデジタル化とは何の関係もない話なんです。私も最初は、デジタルって言っているから、さすがにデジタル変調使っているんだろうと思っていたのですが、真面目に調べてみたら。デジタルでもなんでもなかったのです。

情報元はこれです↓

総務省 電波利用ホームページ | 技術基準適合証明等を受けた機器の検索 (soumu.go.jp) 型式又は名称に書いてあるのは製品のモデル名で、ここのRD-M750はパナガイドのこと、そして技術基準適合証明とは国が無線機に与える証明書で、使用できる電波の種類が指定されています。電波の種類は「F3E」と記載されていて、このコードの意味は変調方式がFM放送と同じアナログ方式だという意味です。ここまで調べてやっとわかりました(笑)パナガイドの変調方式はFMと同じアナログです。デジタルも対応しているのであれば、F3E以外のコードも記載されているはずですが、この証明書にはF3Eのみ記載されています。つまり、これは純粋なアナログ無線機だということです。そしてアナログということは、簡単に盗聴が可能ということです。FMラジオと同じ感覚で誰でも盗聴できちゃうってことです(笑)(注:FMラジオを使って盗聴できる、という意味ではありませんの誤解されないように。FMラジオと同じ種類(変調方式)の電波を使っていますが、周波数はFMラジオ(76~95MHz)とは違う322MHz帯を使っています。なので、322MHzの電波を受信できる受信機なら盗聴できます。)

さて、ここで第3の謎は、パナガイドがアナログなのかデジタルなのかユーザ向けに説明している情報がネットにまったく見つからないこと。かなり頑張って検索してみたんですが、普通一般人は見ないであろうこの総務省の技術基準適合証明サイトしか情報がありませんでした。アナログなら盗聴可能なのは、ある程度通信に関する知識のある人なら知っていることなので、アナログかデジタルか?はユーザとしては気になる情報だと思うのですが、パナソニックのサイトでも説明は皆無。「デジタル処理で高音質」とか変調方式とは全然関係ないことでなんとなくデジタルぽい演出して誤魔化している感があります。変調方式がアナログならアナログですとどこかに書いておいて欲しいものです。ちなみに前述のDigiWaveの変調方式はデジタルです。FHSSというBluetoothと同じデジタル方式を使っています。デジタルであれば容易に盗聴はできません。

結論、今時こんなアナログな機械を使っているのは多分日本だけではないかと、、(他国の事例をあまり知らないので推測で言ってます)これは「いまだにFAXを使っているのは日本だけ!」と同じ状況と思われます。残念です。

最後に。パナガイドは残念なところが多いですが、実は使いやすいのも事実。パナガイドに限らず、別にアナログだからといって使いにくいわけではないのです。一方でデジタルの方が使い方を覚えるのに苦労する、とかよくあることです。DigiWaveはデジタルで高性能ですが、やはり、使い方を覚えるのはちょっと大変、パナガイドは「はい、どうぞ」って何の説明もなく渡されてもなんとか使い方はわかります(ボリュームとチャンネルの2つのツマミがあるだけですから(笑))が、DigiWaveはそうはいきません、最初の設定がそれなりにややこしいというデジタル特有の関門があります。つまりマニュアルがないと使えません。ここら辺がDigiWaveが日本であまり普及してない理由なのかもしれません。音はクリアで、性能、機能はすごいいいんですけどね。

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